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国際学科の金丸裕志教授が執筆した『世界政治4—大統領制と議院内閣制』が刊行されました
国際学科の学科長 金丸裕志教授が執筆した『世界政治4—大統領制と議院内閣制』(ちくま書房、2026年7月)の第8章に寄稿された「シンガポールの政治的リーダーシップ」がこの度、刊行されました。
金丸学科長にこの新刊書の内容について伺いました。
Q:今回の新刊書について教えていただけますでしょうか?
今回の新刊書は、ちくま新書の「世界政治」シリーズ全5巻の第4巻目として出版されました。
元日本比較政治学会理事長で日本大学教授の岩崎正洋先生の企画で、各巻のテーマごとに、全国の比較政治学者に寄稿を依頼されて実現したものです。私はその第4巻『大統領制と議院内閣制』でシンガポールについての原稿を依頼されました。シンガポールは日本と同じ議院内閣制なのですが、その大きな特徴として独立以来今日まで同じ政党が国会の議席を独占し、政権を維持し続けている一党支配体制の事例として、紹介することにしました。
Q:寄稿された一章の内容はどのようなものでしょうか?
シンガポールの議会政治についてではあるのですが、今回は、私自身が前々から書きたいと思っていた「政治的リーダーシップ」について書きました。
Q:どうして「リーダーシップ」なのですか?
まさに、このシリーズの企画にもなっている、世界各国の政治において、一つの共通してみられる大きなトレンドは、各国で大統領や首相というトップリーダーの役割と権力が大きくなってきていることです。たとえばアメリカのトランプ大統領を見てもわかるかと思います。もともとアメリカの大統領制は、国民から直接選ばれる大統領の位置づけが大きい政治のしくみなのですが、2度にわたるトランプ政権で「大統領令」が乱発され、世界がそれに振り回されていることはその典型です。同じようなことが世界で起きているといわれ、政治学ではこれを、政治の「大統領制化」と呼んで注目されています。
Q:日本もそうなのですか?
日本の場合、かつての小泉首相の頃から、自民党の総裁や各党の党首は「選挙の顔」とされ、総選挙は事実上、次期首相を選択する意味を持つようになりました。実はこの頃、首相は「選挙の顔」だけでなく、実際に、首相と首相の執務をサポートするいわゆる「官邸」に次第に権力が集められるようになりました。その後に登場した安倍首相は、そうして権力の集中した自身と「官邸」の権力をフル活用し、歴代首相の中で最も長く首相を務め、「安倍一強」と呼ばれていました。日本に大統領はいませんが、日本もこの「大統領制化」の一例とされています。
Q:シンガポールはその「大統領制化」の一例なのでしょうか?
そうではありません。そこがポイントなのです。今、ポピュリズムとともに大統領制化が言われている世界の政治の流れの中で、むしろそれに逆行しているシンガポールの政治から、私たちは何を学ぶことができるのか?それをこの原稿を通じて書こうとしました。
Q:具体的に言いますと?
本書で明らかにしたように、シンガポールにおける首相選択は、とても「システム化」されているのです。実はシンガポールは、独立後60年間の間に、たったの4人しか首相がいません。しかも今の首相は2年弱前になったばかりなので、実際は60年間に3人の首相しかいません。首相一人当たり平均で、20年間も務めたことになります。
このように一度首相になると長く務めることになるのですが、その代わり、首相に選ばれるまでには主要閣僚を経験し、第二ポストの副首相を務めたあと、時間をかけて首相に任命されます。こうした「システム化されたリーダー選択」は、その時の任期や個人のキャラクターで大統領や首相になることの多い、今日の各国の首脳とは真逆のプロセスであるように見えます。この真逆の事例を紹介することで、ポピュリズムとも呼ばれる今の各国の政治の何が問題で何が問題でないのかを示したかったのです。
Q:本書を書く際に苦労したことはありますか?
今回、出版された「新書」という媒体の形式の執筆は、私にとって初めてのことでした。実は新書というのは、大手の各出版社から二週間に一度くらいの割合で出版されており、多くは200~300頁ほどの分量で、各分野の第一人者の研究者などがその最先端の知見を一般に伝えるものです。私自身もこれまでそれこそ無数の「新書」を読んできました。なので、これまで書いてきた学術書と異なり、一般の読者を対象とします。この点が、これまで書いてきたものと質的に大きく異なる点でしたね。出版社からも、一般向けに書くために、記述をやさしいものにしたり、註をつけなかったり、引用文献は日本語のものにしたりという注文が付いていました。けれど、一般向けに書くことは、大学生に授業をすることに似ていて、私自身にとっては結構、楽しいものでした。
Q:最後に一言、学生たちにメッセージを!
私の書いた第4巻や章だけでなく、ほかの各巻もまたそれぞれの巻の各章も世界各地域・各国の今最もホットな論点についてわかりやすく書かれています。それぞれの巻を読み通すとさまざまな国について分かりますし、また興味関心のある国や地域について拾って読むのも便利です。図書館にも入っていると思いますので、この『世界政治』シリーズ各巻を手に取ってご覧になることをオススメします。
『世界政治3—政党政治のゆくえ』(ちくま書房、2026年6月)にも金丸裕志教授がコラムを寄稿しています。ぜひ、ご一読ください。
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