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「当たり前のことを至極しぜんにふるまう在学生たちに、高い品性を感じます」(日本文学文化学科・太田敦子准教授)

太田 敦子准教授日本文学文化学科
主な担当科目:日本古典文学特殊演習Ⅰ、古典文学史Ⅰ、日本文学特殊講義Ⅲ
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―― ご自身の専門・研究分野の内容と、興味を持ったきっかけを教えてください
私は『源氏物語』を中心とした、物語文学の表現研究をしています。具体的には、“姫君のふるまい”という観点からの分析を、平安時代の習俗・文化までを視野に入れ、民俗学を援用しながら行っています。『源氏物語』との出会いは、1987年に公開されたアニメーション映画『紫式部 源氏物語』(監督:杉井ギサブロー)を鑑賞したことです。1987年という年は、アイドルグループの“光GENJI”がメジャーデビューしたこともあり、『源氏物語』がよく話題に上っていました。当時、私は中学2年生で、担任は国語の先生でした。先生はホームルームで、物語に和歌、現代詩から小説とさまざまな文学作品を紹介してくださいました。和歌でしたら一首、作品でしたら一節をきれいな色紙に自ら毛筆で書かれ、その色紙を黒板に貼りながら説明してくださるというものでした。生徒としては「今日は何かな?」となるわけです。
その日は『源氏物語』でした。紹介の導入として、先の映画のことに触れられ、私は平安時代を舞台にしたアニメという珍しさから、映画館に足を運びました。これが「『源氏物語』をもっと知りたい!」という想いのきっかけになりました。当時、購入した映画のパンフレットは、今も大切にしています。

――『源氏物語』研究の面白いところや、現代社会に通ずる内容などはありますか?
『源氏物語』に登場する、葵の上(あおいのうえ)という人物は、光源氏に心を開かない、冷たい印象の姫君と評されます。理由は、源氏を気詰まりにさせる「まみ」(目元)にあるようです。現代でも、「目は口ほどにものをいう」と使う通りですよね。しかし、その「まみ」が出産を控え、衰弱するなかで変化を見せ、源氏は普段とは異なり、力なくじっと自分を見つめる葵の上の「まみ」に心動かされます。「ああ、二人はようやく夫婦らしくなるのだな」と読み進めていくのですが、丹念に表現を追うと、「まみ」の変化とは「彼女に取り憑いていた六条御息所の生霊がなせる業」だったのかもしれない、となります。研究というのは、このように、物語が描く厳しい現実を突き止めてしまう。つまり、研究は自分が読みたいストーリーを追究するのではなく、「物語が真に描いていることは何か」ということを地道に突き止めようともがくことで、それは時に苦しいけれど楽しいところです。また、女三宮という人物は、皇女という至高の身でありながら、当時の社会通念とは反するふるまい、「立ち姿」が描かれます。現代人には、すぐにはピンとこない「ふるまいへの感覚」といえるでしょうか。この「はしたない」と断ぜられるふるまいが、しかし貴公子、柏木の心を捉えて離さず、その後の物語を大きく揺さぶり、暗転させていくことを考えるとき、姫君のふるまいを考えることに意義を覚えます。私たちは、紫式部によって『源氏物語』が書かれた時代を、現実のこととして体感することはできません。しかし、ふるまいという視点をもって物語を読むとき、誰もが自分の身をもって、物語世界を想像し、実感を得ようと努力することができる。それが、私の研究の面白みだと思っています。

―― 趣味の「刺繍鑑賞」とは? また、実際に刺繍をすることはありますか?
生活の中で目にする、さまざまな刺繍に心を留めているほどですが、デパートのハンカチ売場は私にとっての展覧会会場です。ショーケース越しの汕頭(スワトウ)刺繍や野の花の手刺繍などに、心ときめかせています。なかでもフランス刺繍が好きなのですが、和洋女子大学に着任してから、刺繍とのうれしい出会いがありました。その日は、「基礎ゼミ」(1年次・必修科目)を和洋女子大学の文化資料館で実施し、和洋学園の歴史および国府台ついて学修しました。学芸員の方に説明していただきながら、ゼミ生と見学をしていますと、学園史コーナーの展示の一つに刺繍があったのです! キャプションには、昭和27年~35年頃の作品とあり、当時の学生が授業で作製したフランス刺繍でした。刺繍、特に手刺繍は、一針一針、刺した方の足跡を辿るのが楽しい。刺した方の温もりを感じるといいますか。資料館で出会った卒業生のフランス刺繍も何とも味わいのある作品で、懸命にそして楽しそうに授業に取り組まれたことが、こちらにも伝わってきました。私も刺繍に挑戦してはいるのですが、一針刺すのに四苦八苦しています。それでも、一針ずつ刺している間の静謐な時間のこと、不格好だけれども「私だけの刺繍」という喜びがあるのです。

【写真】和洋女子大学 文化資料館に展示されていた、当時の学生によるフランス刺繍の一部

―― 和洋女子大学の学生たちの印象や、他の大学との違いを教えてください
在学生の皆さんが「人との距離の保ち方を心得ている」ことを挙げたいと思います。キャンパス内には、休憩スペースが点在しているのですが、彼女たちを見ていますと、大勢で行動しているという様子を目にしたことがなく、各人各様に大学生活を送っている。また、好きなものを好きと言い合える空気も感じます。ファッションひとつを取ってみても、流行と完全に合わせているというよりは、流行のなかにも自分の好きなものを追究しているように感じています。互いの個性を認め、価値観を尊重し合う――。至極当たり前のことかもしれませんが、当たり前のことを至極しぜんにふるまう彼女たちに、高い品性を感じています。大学は学びの場であると同時に生活を送る場でもありますから、それぞれが居心地の良い場であることは本当に大切なことです。
また、他の大学と異なることではないのかもしれませんが、食事以外の時間にやたらと物を口にするといった姿を見かけません。「三食きちんと、それもたくさん(!)食べているのね」と、あくまで勝手な想像ではありますが、こちらを安心させてくれるのは、彼女たちの魅力のひとつと言えるでしょうか(笑)。

―― 最後に、和洋女子大学を志望する、高校生へのメッセージをお願いします!
2024年4月に着任して以来、キャンパス内を彩る樹や草花に、日々励まされています。春はキャンパス内にある“さくらプロムナード”の桜の木々を見上げました。やがてキャンパスは甘い香りが満ち、見回すと校舎の壁一面にジャスミンが咲きました。そのジャスミンも花を落とすと、今度はキャンパスを囲むフェンス一面に白い薔薇が咲き誇りました。今は、紫陽花が色を増し、百合の木に桂といった木々が懸命に葉を茂らせています。花の香りが絶えず、やわらかな陽光が射し続けているようなキャンパスであるからか、着任以来、いつも祝福されているような心持ちです。無論、それは私に限ったことなどではなく、大学で過ごす皆が感じ取っているのではないでしょうか。キャンパス内のどこへ行っても、誰と会っても、そこには必ず穏やかな空気が流れるからです。人生を左右するほどに大切な学びの4年間。その4年間を、どこでどのように過ごすかは本当に重要なことです。心を穏やかに保ち、しかし、その心には勉学への情熱を宿して、自分の夢へ果敢に挑む。それを叶えられるのが和洋女子大学だと、教壇に立ちながら日々実感しています。和洋女子大学でお目にかかれることを楽しみにしています。


和洋女子大学 日本文学文化学科は次の3つの専攻から成り立っています
日本文学専攻の学びについてはこちらから
書道専攻の学びについてはこちらから
文化芸術専攻の学びについてはこちらから

【2025年度 入試情報】
「一般選抜A日程(特待生&寮費免除対象入試)」
出願期間 2025年1月8日(水)~1月22日(水):詳細はこちらから
「共通テスト利用選抜(特待生対象入試)」
出願期間 2025年1月8日(水)~2月3日(月):詳細はこちらから

【イベント情報】
2月23日(日祝)「冬のオープンキャンパス」:詳細はこちらから

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