キーワードで学ぶ国際観光確定版

71 聖地巡礼 聖地巡礼とは、もともとは、宗教上の重要な意味を持つ場所すなわち聖地に 赴く宗教的な行為をいう。イスラム教徒が生涯に一度は訪れるべきとされてい る聖地メッカのカアバ神殿に世界各地からイスラム教徒が訪れるのが最も有名。 しかし近年、これが転じて、映画やアニメ、漫画などの作品のモデルや重要な 舞台となった場所を「聖地」として訪れることが流行し、「聖地巡礼」と呼ばれ ている。従来のいわゆる観光名所を持たない地方の自治体などでは、この「聖 地巡礼」により国内外から多くの観光客が訪れるようになり、地方の自治体や 商工会の中には、これを町おこしや地域興しの切り札とするべく、プロモーシ ョンや土産品製造などを行い売り出している地域も数多く出てきている。 【参照項目】ソフトパワーと観光、コンテンツ・ツーリズム 【参考文献】岡本亮輔(2015)『聖地巡礼:世界遺産からアニメの舞台まで』中公新書. (金丸裕志) 世界遺産と観光 1990 年代になりツーリズムが国際的に発展すると、観光資源として世界遺産 がもつ力への注目が高まった。実際、95年に登録された「白川郷・五ヶ山の合 掌造り集落」は、登録前の70万人から登録後に100万人を超えた。それにつれ て、各国国内で世界遺産への登録申請を求める圧力が強まり、日本でも政府の 推薦枠をめぐって地域振興をもくろむ自治体間の競争が激しくなった。国際レ ベルでも、各国政府は世界遺産登録を競い合っている。他方、ユネスコは、財 政や審査能力から登録件数を絞るようになり(2020 年からは各国1 件)、さら に競争を激しくさせている。しかも、白川郷や京都のように観光客急増で地域 住民が住みづらくなるオーバーツーリズム問題が起きている。 【参照項目】オーバーツーリズム、観光公害 【参考文献】中村俊介(2019)『世界遺産―理想と現実のはざまで』岩波新書. (杉浦功一)

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