キーワードで学ぶ国際観光確定版

57 世界遺産条約体制 1972 年にユネスコ総会で締結されて以降の世界遺産条約の体制を区分する と、世界遺産委員会で初めて世界遺産が登録された78 年から91 年までが第一 期で、文化遺産の概念は、モニュメントや建造物といった狭い西欧的コンセプ トから、文化的景観を含む広いものに広がった。また、「石の文化」だけでなく アジアの「木の文化」やアフリカの「土の文化」といった西洋以外の文化遺産 の登録が容易になっていった。92 年以降の第二期には、世界遺産の地理的拡大 と内容の多様化が目指され、遺産のモニタリング体制も強化された。そして、 2007 年にオマーンの野生動物アラビアオリックスの保護区が初めて世界遺産 リストから削除され、現在に至る第三期が始まったとされる。 【参照項目】 【参考文献】松浦晃一郎(2008)『世界遺産―ユネスコ事務局長は訴える』講談社. (杉浦功一) 世界遺産登録の過程 まず各国政府は、暫定リストの中から優先順位の高い案件を選び、登録推薦 書を正式に世界遺産委員会に提出する。その後、ユネスコの諮問機関(文化遺 産の場合はイコモス、自然遺産の場合はIUCN)が技術的な観点から所定の基準 に沿って審査を行う。 翌年に技術的な評価勧告が世界遺産委員会に提出される。 評価勧告では、登録、情報照会、登録延期、不登録のいずれかが報告される。 同委員会では、評価勧告を元に審議を行い、結論を採択する。最近、諮問機関 の評価を同委員会が覆す「政治的」決定が増加し半数に及んでいる。また、ユ ネスコは財政上の制約と登録件数の多さから審査件数を制限しようとするが、 多くの登録を求める加盟国との間でせめぎあいが続いている。 【参照項目】 【参考文献】杉浦功一(2018)世界遺産をめぐる国際政治―『観光の国際政治学』へ向けて. 和洋女子大学紀要.59,p23-34. (杉浦功一)

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