キーワードで学ぶ国際観光確定版

58 世界遺産とユネスコ 1945 年 11 月に設立された国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は、 ユネスコ憲章にあるように、文化遺産の保護を主要な任務の一つとしてきた。 1950 年代になると、戦争による文化遺産の破壊以外に、経済開発に伴う破壊が 頻発するようになる。エジプトでアスワンハイダムの建設に伴って、アブシン ベル神殿をはじめとするヌビア地方の遺跡が水没する恐れが生じると、ユネス コは、1960 年に同遺跡を保護しようと国際的なキャンペーンを行い、それが世 界遺産の制度を作るきっかけとなった。1972 年にユネスコの総会で世界遺産条 約が締結され、世界遺産委員会を支える世界遺産センターがユネスコ事務局に 設けられるなど、世界遺産とユネスコは密接な関係にある。 【参照項目】 【参考文献】杉浦功一(2018)世界遺産をめぐる国際政治―『観光の国際政治学』へ向けて. 和洋女子大学紀要.59,p23-34. (杉浦功一) 世界観光倫理憲章 持続可能な観光(Sustainable Tourism)についてはそれが「持続可能な発展」 (Sustainable Development)の影響を受けているということもあり依然として 経済、自然資源偏重の傾向は否定できないように思われる。ただ国際自然保護 連合(IUCN)によって1980 年の「世界保全戦略」(World Conservation Strategy) において「持続可能な発展」が初めて提起され、1992 年国連環境開発会議採択 の持続可能な発展の行動綱領では、自然環境だけでなく社会への配慮の重要性 も確認されているが、同時期から多用されるようになった持続可能な観光にも その影響が確認される。そしてこれらの議論の延長線上にある「世界観光倫理 憲章」(The Global Code of Ethics for Tourism) 〔1999 年10月〕では社会へ の配慮が強調されている。 【参照項目】聖・俗・遊と観光の持続可能性 【参考文献】「世界観光倫理憲章」(国連世界観光機関〔UNWTO〕 https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2020/01/GCET.pdf (里正明伍)

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