キーワードで学ぶ国際観光確定版

49 ヨーロッパの海浜リゾート開発 フランスの歴史家コルバンは、現在は観光地として親しまれている海浜 は、長らく「恐れと嫌悪の深淵」と捉えられてきたと指摘している。こうした 海浜の意味づけは、18世紀のイギリスにおける療養法としての「海水浴」の 普及や「自然」をまなざしの対象とするにいたるグランドツアーの展開、19~ 20世紀にかけての鉄道網の発展や有休休暇に関わる法整備等を背景に、当初 は健康のため、やがて遊びのために滞在するリゾートへと編成し直されていっ た。こうした動きはイギリスからフランス、後に地中海地域へと伝播した。 【参照項目】 【参考文献】Corbin, Alain, 1988, Le Territoire du Vide: L’Occident et le désir du tivage(1750-1840), Aubier-Montaigne., (=1992, 福井和美訳『浜辺の誕生――海と人間の系譜学』藤原書店.) (秦泉寺友紀) ヨーロッパの巡礼 聖遺物(キリストや聖母マリアの遺品、聖人ゆかりの品々等)や、聖母マ リアの出現といった奇跡の起こった地を祀った教会を目的地として行われる 旅。サンティアゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)やルルド(フランス)、 ロレート(イタリア)などの聖地が知られる。巡礼は中世のヨーロッパで時に 「巡礼病」と呼ばれるほどに大流行した。もともとは何らかの恩寵を期待して なされる旅であったが、現在は徒歩でゆったりと時間をかけて移動することを 楽しむ旅としての性格も帯び、多くの観光客を集めている。巡礼者の宿泊施設 や、病に倒れた巡礼者をケアする施設はホスピスと称され、ホスピタリティ (歓待)やホスピタル(病院)の語源となった。 【参照項目】聖地巡礼 【参考文献】山中弘(2012)『宗教とツーリズム――聖なるものの変容と持続』世界思想 社. (秦泉寺友紀)

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