キーワードで学ぶ国際観光確定版

40 ソーシャル・ツーリズム ソーシャル・ツーリズム (Social Tourism) とは、旅行の機会に恵まれない 人々に対して、観光旅行に参加しやすくするための条件整備を行うことをいう。 たとえば経済的理由で旅行の機会に恵まれない人たちには廉価な手段の提供や 運賃割引などの措置を施し、身体障害のある人たちには観光地や観光施設、交 通機関をバリアフリーにすることもそれに該当する。その歴史は古く、第二次 世界大戦後のフランスで導入された有給休暇制度で、多くの労働者に旅行の機 会が与えられたこともその一つであると言われる。いずれも、旅行(観光)す ることは人々の「権利」であるという考えに基づいており、たいへん興味深い。 【参照項目】マスツーリズムと特定ツーリズム(ポスト・マスツーリズム)、フレキシブルワ ーク制度による観光消費促進 【参考文献】岡達哉(2014)ソーシャル・ツーリズムの展開をめぐる一考察.秀明大学紀要. 11.p23-44. (金丸裕志) ダークツーリズム ダークツーリズムとは、戦争や紛争、大規模な事故の現場、自然災害の被災 地など、死や暴力などを伴う悲劇にまつわる場所を訪れることを主な目的とす る観光を指す言葉である。代表的な観光地としてはアウシュビッツ収容所や9・ 11同時多発テロ事件の「グラウンド・ゼロ」などがある。日本では東日本大震 災の後、津波の被災地や福島第一原発の観光地化という議論の中で広く知られ るようになった。その議論の中で、被災者などに対して不謹慎であるという批 判が出される一方で、これを人類の反省・教訓の材料として後生に語り継いで いくという意義も賛同者からは強調されており、「悲しみを受け継ぐ」という意 味から「ピースツーリズム」と呼びかえる動きもある。 【参照項目】マスツーリズムと特定ツーリズム(ポスト・マスツーリズム)、語り部、モノ消 費からコト消費 【参考文献】①井出明(2018)『ダークツーリズム-悲しみの記憶を巡る旅』 幻冬舎新書. ②風雷堂(2017)『ダークツーリズム入門-日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅.』イース ト・プレス. (金丸裕志)

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