キーワードで学ぶ国際観光確定版

41 棚田観光 棚田はその美しい景観から、観光資源となっている。しかし、田植え機やコ ンバインが使えない棚田での稲作は、通常の水稲や陸稲と比べて大変な労力が いる。また、観光客増加による水供給の減少や、観光参入に伴う農業従事者の 離農などの問題が指摘されている。そのため、いかにして観光と農業を両立さ せて棚田景観を維持するのかが課題となっている。2020 年現在、世界遺産に登 録されている棚田は、フィリピン・コルディリェーラの棚田群、バリ州の文化 的景観:トリ・ヒタ・カラナ哲学に基づくスバック灌漑システム、紅河哈尼棚 田群の文化的景観(中国雲南省)の3カ所がある。日本では、鴨川市の大山千 枚田、輪島市の白米千枚田、千曲市の姨捨棚田などが知られている。 【参照項目】 サステナブル・ツーリズム、農村観光 【参考文献】 ①板垣武尊(2017)中国雲南省元陽におけるバックパッカー向け宿泊施設の 変容. 立教観光学研究紀要.19,p3-14.②菊池真純(2016)『農村景観の資源化―中国村落 共同体の動態的棚田保全戦略』御茶の水書房. (板垣武尊) 中国雲南省における観光開発 中国では改革開放後以降、外国人の個人旅行が解禁された。雲南省では1980 年代後半以降に徐々に解除され、大理や西双版納などの飛び地状に展開する民 族観光地の開発にバックパッカーが大きな役割を果たした。また外国人未開放 地区は、1990 年以降に徐々に開放されると、好奇心旺盛なバックパッカーの目 的地になっていった。ところが2000 年以降は、そのようなバックパッカーが発 見した観光地に大量のマスツーリストが流入し、外部出身者による大規模な観 光開発が行われた。そして、観光地化を嫌ったバックパッカーは新たな目的地 を求め、元陽や瀘沽湖などの風光明美な地域を発見した。このように雲南省の 周縁地域はバックパッカーによって拡大してきた。 【参照項目】 観光空間の発展と変容、ガイドブック 【参考文献】 板垣武尊(2018)アジア地域におけるバックパッカーの目的地の変遷.李・臺 編『国際社会観光論』志學社.p161-182p. (板垣武尊)

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