キーワードで学ぶ国際観光確定版

28 ソフトパワーと観光 国家間の外交関係や「ソフトパワー」ともいわれる国家の文化的な魅力は、 外国人観光客の増減に影響を与えるため、文化外交も含めた外交戦略が重要と なってくる。この点で韓国は、国際観光行政を交通局から文化観光体育部に移 し、韓国観光公社に多額の予算と人員を割くなど、韓流文化の流行を通じた国 家イメージの向上に力点を置いて効果を上げてきた。 政府観光組織への予算は、 2013年時点で485億円と、日本の17 倍に及び、韓国観光公社の職員数もJNTO の5 倍弱であった。実際、14 年の時点では、韓国への外国人旅行客は1420 万 人で、日本の1342万人よりも約100万人上回っていた。ただし、その後、日本 も文化外交と外国人観光客誘致に力を入れるようになった。 【参照項目】 【参考文献】ジョセフ・S・ナイ著、山岡洋一訳(2004)『ソフト・パワー―二一世紀国際政 治を制する見えざる力』日本経済新社. (杉浦功一) 「中国民間芸術の郷」観光と「文化」 観光地の形態から中国のエスニック・ツーリズムは自然村遊園地型、人工遊 園地型、自然村博物館型、民家体験型などに分類することができる。自然村遊 園地型は文字通り村全体が観光地となっていて、観光客は民族舞踊の鑑賞、伝 統行事への参加、現地の人々の日常生活の観察などを通して「民族文化」に触 れることになっている。中国の貴州省にある人口500人ほどの苗族の村郎徳上 寨は、1980 年代に開発された典型的な自然村遊園地型民族文化村で1997 年に は中央政府から「中国民間芸術の郷」と命名された。観光客が触れる吊脚楼(伝 統住宅)、迎賓の酒の儀式、民族舞踊・楽器演奏などの「文化」は演出の性格が 強く、本来の文化とは距離があるように思われる。 【参照項目】聖・俗・遊と観光の持続可能性 【参考文献】「朗徳上寨」(『人民中国インターネット版』 QRコード参照。 (里正明伍)

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