キーワードで学ぶ国際観光確定版

27 「桂林観光」 中国の宋の時代の詩人王正功の名言とされる「桂林山水甲天下」(桂林山水の 美しさは天下一)という言葉は中国では知らない人がいないほど有名である。 このことは桂林の山水が昔から少なくとも文人の間ではその美しさが知られ、 今日においては天下一であるというイメージが定着していることを物語る。こ のこともあって桂林観光の目玉はやはり漓江下りによる山水の鑑賞である。た だ、桂林は1970 年代から国家プロジェクトとして開発され続けている観光地 であり、2018 年度は観光客数が延べ1.09 億人となるなど、「人工」、「人」が 「自然」を圧倒するような勢いを呈するに至っている。古人が見た「美しさ」 を探索する旅が求められるように思えてならない。 【参照項目】聖・俗・遊と観光の持続可能性 【参考文献】戸崎哲彦(2003)成句“桂林山水甲天下”の出自と典拠について.島根大学法文 学部紀要.14,pp.1-20. (里正明伍) 「紅色観光」(レッド・ツーリズム) 中国では毎年国レベルの観光テーマが打ち出されているがその時系列から は国の観光政策の変化のみならず国全体の動向もある程度窺い知ることができ る。天安門事件後政府は「三信危機」(共産主義・共産党・社会主義事業に対す る信仰・信頼・信念の危機)を克服するため「愛国主義」教育を強化したが、 その一環として2004年には「紅色観光」(「主に中国共産党が人民を率いて革命 と戦争の過程で打ち立てた功績関連の記念場所を参観し、その歴史、事績、精 神を学習すること」 〔中共中央弁公庁・国務院弁公庁「2004-2010 年全国紅色旅 遊発展企劃綱要」)の方針が確定され、2005 年を「中国紅色観光年」とするこ ととなり、今日では中国の観光事業の大きな柱となっている。 【参照項目】聖・俗・遊と観光の持続可能性 【参考文献】寧夏機場有限公司「紅色文化宣伝片」 https://www.bilibili.com/video/av53257256/ (里正明伍)

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