キーワードで学ぶ国際観光確定版

18 グローバル化と観光 グローバル化は、簡単に言うと、国境を超えたヒト、モノ、カネの動きのこ とであり、1980 年代以降急速に拡大していった。ヒトとカネの移動を伴う国際 観光の広がりは、まさにグローバル化の現象である。1995年に5.3 億人であっ た世界の外国旅行者数は、2005年には8.1億人となり、18 年には前年比5.4% 増の14 億に達した。しかし、グローバル化に対する評価は移り変わっている。 1990 年代にグローバル化という言葉が注目を集めた当初は、それを好ましいと する楽観的な主張が広く受け入れられた。同様に、国家への評価も、スーザン・ ストレンジの『国家の退場』というタイトルにもあるようにその役割の縮小が 強く主張された。しかし21世紀に近づくと、貧富の格差拡大にともなう反グロ ーバリズム運動の盛り上がり、悲観的なグローバル化論が勢いを増した。今世 紀に入り、アメリカでの9・11同時多発テロが起きると、グローバル化につい て慎重な議論が増え、国家の役割も改めて注目されるようになった。現在は、 外国人労働者や移民の管理に見られるように、国家の役割強化が求められつつ ある。 観光の分野も同様であり、国際競争が激しくなる中で、日本の「観光立国」 戦略やクールジャパン政策のように、観光振興は国家の国際観光政策に左右さ れる。2019 年の日韓対立と韓国からの訪日観光客の減少のように、国家間対立 の影響を受けることもある。国際観光の広がりはグローバル化の典型的な現象 ではあるが、国連観光機関国家の役割も(再)注目されているのである。 【参照項目】国際観光の国家間競争、国際観光客の世界的な増加、観光立国、クールジャパ ン政策、日韓対立と訪日観光客の減少 【参考文献】①杉浦功一(2007)グローバル化と国家.岩崎正洋・坪内淳編著『国家の現在』 芦書房.p193-223.②杉浦功一(2018)世界遺産をめぐる国際政治―『観光の国際政治学』へ 向けて.和洋女子大学紀要.59,p23-34. (杉浦功一)

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