キーワードで学ぶ国際観光確定版

12 紛争・戦争と観光:ダークツーリズム序説 人類の歴史とは発展の歴史であるとともに、戦争や紛争といった暴力の歴史 でもある。20世紀という時代は、産業化に伴う急速な経済成長を経験するとと もに、人類の絶滅にも至りかねない強力な兵器の開発と全面戦争が行われた。 21世紀の現在、国際社会はそうした反省と危機感に基づき、戦争や暴力を防止 しようと試みている。侵略戦争の禁止、核兵器の削減、そして広く言えば貧困 との闘いも、暴力と戦争の防止のための取り組みであるといえる。 こうした戦争や暴力を止めることは観光とどうかかるのか。そのヒントとな るのが「ダークツーリズム」であるといえる。詳細は関連項目の「ダークツー リズム」のところを参照していただきたいが、風光明媚な景勝地や人類の成功 と繁栄の遺産だけでなく、人類の歴史における暴力や戦争すなわち人類の「負 の遺産」いわば「失敗の歴史」の場を訪れるのが「ダークツーリズム」である。 これは観光の新しいスタイルであるといえる。 この「ダークツーリズム」は日本人にとっても例外でない。広島や長崎の原 子爆弾(核兵器)の被害、福島第一原子力発電所の事故による被害、核(原子 力)に関してだけでもこうしたインパクトのある「負の遺産」が存在するのみ ならず、日本人が関わった太平洋戦争時の「負の遺産」は海外にも存在する。 先に行述べたように、「ダークツーリズム」とは人類の「負の遺産」を巡ること で、戦争や暴力といった人類の「失敗の歴史」を学ぶことでもある。そうした 場所は日本にも数多くあり、また日本人が関わった場所が海外にもあるという ことである。 【参照項目】ダークツーリズム、語り部、モノ消費からコト消費 【参考文献】①井出明(2018)『ダークツーリズム-悲しみの記憶を巡る旅』幻冬舎新書. ②風雷堂(2017)『ダークツーリズム入門-日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅.』イース ト・プレス. (金丸裕志)

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