キーワードで学ぶ国際観光確定版

11 観光と開発戦略・開発政策 「開発(development)」とは「発展」とも訳されるように、何かがよい方向 へ向かって進んでいくことを意味する。また通常、開発という際には、経済開 発を意味することが多く、経済的な指標で測られることが多い。歴史的に見る と、国家開発は産業政策と大きく結びついてきた。というのも、経済発展に伴 い、主要産業分野がシフトしていくことが明らかになっているからである。経 済の発展に伴い、主要産業が、農業や漁業などの第一次産業から工業・製造業 といった第二次産業、商業・サービス業などの第三次産業へとシフトしていく と指摘した「ペティ=クラークの法則」に従えば、まだ第一次産業が中心であ る国ではそれをいかに第二次産業へとシフトさせていくか、また第二次産業が 主要産業で歩くにはそれをどのように第三次産業へと移行させていくかが、国 家の開発戦略となり、それを実現させるのが開発政策となる。 日本を含むいわゆる先進国はこうした過程を経て現在は第三次産業が経済 の中心となっている。そして観光という産業分野はこの第三次産業に位置する。 よって第三次産業へシフトする開発戦略とそれを実現する開発政策の中に観光 産業の振興策は位置づけられる。日本では長らく、「モノづくり」すなわち製造 業が、(とくに経常収支を得るための)主要な産業と位置づけられてきた。だが バブル崩壊後、経済成長が低迷する中で、第三次産業の観光業が注目されるよ うになる。とりわけ、経常収支を考えた際に新たな「輸出品」としての観光、 すなわち外国人観光客の誘致がその有力な手段として位置づけられるようにな った。現在では外国人観光客の日本国内での消費は5 兆円に上るともいわれる。 これはそれだけの「輸出」に見合う収入があったということを意味する。 【参照項目】観光立国、観光収入、観光大国 【参考文献】①デービッド・アトキンソン(2015)『新・観光立国論』東洋経済新報社.②絵 所秀紀(1997)『開発の政治経済学』日本評論社.③金丸裕志(2018)開発途上国における観 光と開発.和洋女子大学紀要特別号.59,p1~12.④末廣昭(2014)『新興アジア経済論』岩 波書店. (金丸裕志)

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