キーワードで学ぶ国際観光確定版

66 『紅夢』と「喬家大院」観光 意図せざる結果としてロケ地を有名な観光地に変貌させたケースとして中 国の著名な映画監督張芸謀氏による1991 年の作品『紅夢』(原名『大紅灯籠高 高挂』 〔Raise the Red Lantern〕 )が挙げられる。民国期のある大富豪の家で繰 り広げられる複数の妻妾間の嫉妬による悲劇的な出来事を描いたもので、人気 女優を起用したこともあって忽ち人気化しヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞 も受賞している。この作品のロケ地となったのが「喬家大院」という、313 室 もの部屋を擁する清の時代の富商の旧邸で、当時は地域の民俗博物館として使 用されていた。映画のヒットによって観光客が急増し、「喬家大院」という名前 のテレビドラマも作られるようになった。 【参照項目】「メディア– 社会」論と観光 【参考文献】遠藤英樹,寺岡伸悟,堀野正人編著(2014)『観光メディア論』ナカニシヤ出版. (里正明伍) 国際観光客の世界的な増加 観光は世界で最も成長しつつある産業の一つである。1995年に5.3 億人であ った世界の国際観光客到着数(=外国旅行者数)は、2005年には8.1億人とな り、08 年のリーマンショックで一時減速したものの、その後再び増加に転じて 14年には約11.4 億人まで増加、18 年には前年比5.4%増の14 億に達し、今後 さらに増える見通しである。国連世界観光機関(UNWTO)の予測によると、国際 観光客到着者数は2030 年には18億人に達すると見込まれている。世界旅行ツ ーリズム協議会(WTTC)によると16年度の観光に関連した産業は、世界のGDP の10.2%の約7.6兆米ドルを占め、世界の雇用の9.6%の雇用を生み出してお り、年々伸びている。人数でも収入面でも。特にアジア太平洋地域が伸びてい る点が注目される。 【参照項目】日韓対立と訪日観光客の減少 【参考文献】UNWTO, International Tourism Highlights 2019 年日本語版 (杉浦功一)

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