キーワードで学ぶ国際観光確定版

52 「一帯一路」と観光 中国は近年急速な経済成長を遂げ第2の経済大国と言われるようになり、そ してそれに伴い拡張主義とも捉えられる国家構想を打ち出すようになった。抽 象的な「中華民族の偉大な復興」を内実とする「中国夢」と、中国の主導によ る、中国からヨーロッパにつながるかつてのシルクロード一帯と、中国の沿岸 部からアフリカ東岸に至る航路に広がる地域からなる経済圏構築の構想である 「一帯一路」(One Belt One Road Initiative)」とがそれである。このような 構想の実現に向け、これらの地域との間の観光交流が国策として進められてお り、規模が急速に拡大しつつある。 【参照項目】聖・俗・遊と観光の持続可能性 【参考文献】河合正弘(2019)「一帯一路」構想と「インド太平洋」構想.World Economy Report.2, p1-7. (里正明伍) 海外旅行倍増計画(テンミリオン計画) 日本人の海外旅行を促すために政府が打ち出した計画。当時はとくに米国と の間で貿易摩擦が問題となっており、米国からは内需拡大と併せて日本人の海 外旅行の推進が強く求められていた。この計画の結果、いわゆる「バブル経済」 の追い風もあって、1986 年に500 万人であった日本人海外旅行客は、その後、 1990 年には2 倍の1000 万人に達し、現在に至るまで、日本人の海外旅行がよ り身近なものとなった。他方、日本人の海外旅行(アウトバウンド)の急増に 対し、海外からの観光客(インバウンド)は徐々にしか伸びず、2007年の「観 光立国推進基本法」制定後、インバウンドが急増するまでは、日本経済に与え る好影響は限定的であったといえる。 【参照項目】観光立国、観光基本法 【参考文献】今村元義(2007)戦後のわが国における観光政策に関する一試論.群馬大学社 会情報学部研究論集.14,p321―336. (金丸裕志)

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