キーワードで学ぶ国際観光確定版

34 アグリツーリズモ イタリア語で、アグリ=農業、ツーリズモ=観光の意で、「農業(農村) 観光」、すなわち農家が経営する施設(宿泊施設、畑、農作物を加工する工 房、牧場等)を利用しての観光業をさす。とくに1980年代以降の農作物の生 産過剰を背景に、EUの農業政策は、農地の一部について一定期間耕作せずに 自然のまま放置することで景観を保護したり、有機農業への転換を促したり、 あるいはそうした土地を宿泊施設に転用することを推進した。小・中規模農家 の占める割合がヨーロッパの他の国々と比較すると高いイタリアでは、マスツ ーリズムの発展もさらなる背景として、農家の生き残り策のひとつとして、こ うした農家が経営を担う観光業が発展した。 【参照項目】スローフード、フード(ガストロノミー)・ツーリズム、マスツーリズム、ワ イン・ツーリズム 【参考文献】松永安光,徳田光弘(2007)『地域づくりの新潮流―スローシティ/アグリツ ーリズモ/ネットワーク』彰国社. (秦泉寺友紀) アルプス観光 スイス、イタリア、ドイツ、フランス、オーストリア、スロベニア、リヒ テンシュタインの7か国にまたがり、約1200kmにおよぶアルプス山脈は、ヨ ーロッパ最大の山脈である。切り立った険しい岩肌に代表されるような高山な らではの自然景観は、18世紀後半前後までは恐怖の対象として忌避されてい たが、やがて美をめぐる感覚の変化を経て、雄大な自然美として人気を博する にいたった。19世紀半ばの登山ブーム、20世紀を迎えてからのスキーブーム は、アルプスをヨーロッパ有数の観光地へと押し上げ、夏は避暑地、冬はスキ ーリゾートとして多くの観光客を集めている。サンモリッツ(スイス)、シャ モニー(フランス)、インスブルック(オーストリア)などが知られる。 【参照項目】海浜リゾート開発(ヨーロッパ)、グランド・ツアー 【参考文献】河村英和(2013)『観光大国スイスの誕生――「辺境」から「崇高なる美の 国」へ』平凡社新書. (秦泉寺友紀)

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz