キーワードで学ぶ国際観光確定版

24 オーバーツーリズム(クルーズ観光とヴェネツィア) オーバーツーリズムとは、ある観光目的地にその土地が許容できる規模以 上の観光客が詰めかけ、交通機関の混雑や騒音などの問題で現地住民の生活を 脅かしたり、そうした混雑により観光客の満足度も低下させる現象をさす。観 光による人の移動の規模が拡大するなか問題となり、「持続可能な観光」が世 界的に模索されている。たとえばイタリア北部の都市ヴェネツィアでは、大型 クルーズ船の大量の観光客が、宿泊も食事も船内で済ませ、現地の観光業にさ ほど恩恵を与えない一方、街歩きで旧市街の混雑に拍車をかけていること、大 型クルーズ船の寄港による波の変化や海面の水位上昇が、遠浅の内海に浮かぶ 島々からなるヴェネツィアの地盤に負荷をかけていることが問題となってい る。 観光(客)のまなざし 観光(客)のまなざし(tourist gaze)とは、ジョン・アーリーが1990 年に 著した書籍において議論した概念で、観光客のある種の特殊な見方や期待を意 味する。観光という体験は、日常から遠く離れた異なる景色、風景、街並みな どにまなざしを投げかけることが含まれている。まなざしの対象とされるのは 日常との対称性を有する非日常であり、通常は労働と明確に対比されるもので、 強烈な楽しみが期待される。また、観光のまなざしは以下の3つの二項対立に 分類される。ロマン主義的まなざしか、集合的まなざしか。歴史的か現代的か。 本物かまがい物か。このような観光客のまなざしは社会的に構造化され、組織 化されている。 【参照項目】エスニック・ツーリズム 【参考文献】①ジョン・アーリ,ヨーナス・ラースン著.加太宏邦訳(2014)『観光のまなざし(増補 改訂版)』法政大学出版局.②神田孝治(2014)観光客のまなざし.大橋昭一・橋本和也・遠藤英樹・神 田考治編『観光学ガイドブック-新しい知的領野への旅立ち』ナカニシヤ出版.p102-107. 【参照項目】サステナブル・ツーリズム 【参考文献】イタリア政府観光局(ENIT)公式サイト「イタリ アの旅 世界遺産を巡る ヴェネツィアとその潟」 (http://visitaly.jp/unesco/venezia-e-la-sua-laguna)(秦泉寺友紀)

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz