キーワードで学ぶ国際観光確定版

20 観光の波及効果の考え方 観光は波及効果が多い産業だといわれる。宿泊業、旅行業、輸送産業だけで なく、飲食業、商業、農業、金融保険業、広告業など様々な産業に効果が及ぶ からである。したがって、観光の経済効果は単に観光消費の増加だけでなく、 産業のつながりや所得増加による効果まで測定する必要がある。観光が経済に もたらす波及効果の測定方法には、以下の手法がある。 1)産業連関分析による域内所得および雇用創出効果の分析:経済波及効果と は、ある産業の需要が増加したとき、その産業だけでなく取引を通じて他の産 業に影響を及ぼす生産誘発効果のことをいう。産業連関表とは産業間の投入産 出を表にしたもので、その表を用いて影響の大きさを試算することができる。 観光による産業別消費から輸入(移入)分を除いた国内生産分が直接効果、そ れに中間投入を通じた生産誘発額を第一次間接効果、さらに雇用者所得増が家 計消費増加を通じてもたらす生産誘発額を第二次間接効果である。それらを足 したものが生産誘発額となり、それに雇用係数をかけて雇用誘発者数が計算さ れる。 2)マクロモデル等による経済効果の測定:産業連関分析では、賃金上昇や金 利上昇を通じたクラウディングアウト効果や、家計の予算制約や財政の制約に より他の消費や財政支出に影響を及ぼす代替効果、また公共投資や民間投資に よる供給効果などは計測できない。そこで、マクロモデルや一般均衡モデルに よるシミュレーション分析も行われている。観光支出増加による乗数効果を求 める観光乗数モデル、投資による供給効果を含める生産関数アプローチや内生 的成長モデル、応用一般均衡(CGE)モデルなどがある。 3)投資効果の測定:大規模イベント等では施設整備費などの投資効果を考え るために、費用便益分析(CBA)や、観光インパクトの日市場的経済価値測定な どがある。 【参照項目】 【参考文献】藤丸麻紀(2019)観光による経済効果の測定方法に関する考察.和洋女子大学 紀要.59,p35-45. (藤丸麻紀)

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz