キーワードで学ぶ国際観光確定版

22 地方の活性化と観光 元気がない日本の地方を活性化させる1つの方法は、観光である。特定の地 方に観光客を呼び込むためには、その地方の歴史・文化・風景・風土・風習・ 産業の特徴が何であるかを明確にし、この特徴を生かすことが必要である。た とえば、独特の山の風景と温泉をもつ湯布院は、映画祭を企画することによっ て一大観光地となった。古い街並みと運河をもつ倉敷は、繊維産業で財を成し た大原家により大原美術館が建造され、多くの美術愛好家を集めている。その 繊維製品や周辺の果樹園で採れた桃やブドウやそれを材料にしたスイーツを観 光客にふるまえば、農業や繊維工業の振興にも貢献する。そもそも観光は、日 常生活とは異なるものを見たり経験したいという願望が根底にある。農村では スローな生活や土いじりを体験できる。全国には珍しい祭りが多く、それを見 学するだけでなく参加するのも面白い。そのような体験は外国人だけでなく、 スローな時間と風景を修学旅行生やシニアも楽しむことができる。 地方の中小都市の駅前商店街は活気がない。その空き店舗を利用して観光客 を呼び込むことも考えるべきである。そのためには、空き店舗で面白い体験が できるようにしてもよいだろう。たとえば、特色ある漫画・アニメの制作者を 招いて制作工房にすることもできる。地域によってはスポーツ系の漫画工房を 作り、町のスポーツ施設でスポーツ大会を催す。動物系漫画なら、町の郊外に 動物と触れ合える場所を作る。釣りが可能な場所なら、釣りの漫画の制作工房 にし、近くの空き店舗で釣りの映画を上映するなど。これらの仕事の手伝いに は、引きこもりの漫画好きの若者が行うのもよいかもしれない。観光収入を増 やすためには、日帰りではなく滞在してもらう必要がある。そのためには、空 き店舗や廃寺、農家を利用した民泊用の施設が必要である。また、観光地とし て多くの観光客を呼び込むためには、1 つの観光地だけでなく数か所の観光地 をセットにした観光ルートの設定が必要である。倉敷の例では、瀬戸大橋、岡 山の後楽園、県北の温泉や牧場をセットにした観光ルートを設定できる。航空 運賃が安価な格安航空の運航が増えれば、 若い人なども遠方からも来易くなる。 以上のような地方の魅力は、地域SNS、地元雑誌・ミニコミ誌、地元ケーブ ルテレビによって掘りだし全国・全世界に発信することができる。 【参考文献】山下景秋(2008)倉敷芸術都市構想―芸術による倉敷市の活性化―.倉敷芸術 科学大学紀要.13,p107-119. (山下景秋)

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