和洋女子大学は、1897年(明治30年)に堀越千代によって創設された「和洋裁縫女学院」をルーツとしています。明治維新を迎え、近代化をめざした日本は、1872年(明治5年)に学制を発布し、男女に関わりなく小学校への就学を義務付けましたが、学制発布当初(明治6年)の就学率は、男子が4割に対し女子は15%と、女子の就学率が非常に低かったのです。その後幾度かの教育制度の改正を経て、小学校の就学率が9割を迎えるのは1890年代にはいってからでした。ただ、小学校を卒業した後の進学の道筋は男女で異なっており、とりわけ女子の旧制官立大学への入学が制限されるなど、高等教育を受ける機会は、男子に比べて大変不利な状況がありました。戦前、男女が平等に学校や大学で学ぶことができなかった時代において、本学の創始者堀越千代は、西欧から伝わった洋裁や日本古来の和服の技術を身に着けることで、女性が社会の中で自立することをめざして、和洋裁縫女学院を創設しました。創立以来、建学の精神に基づき、和洋学園は自立し、社会に目を向け貢献できる女性を教育し、家庭科教員をはじめとして優秀な女性たちを輩出してきました。本学の教育理念のルーツをたどると、堀越千代が和洋裁縫女学院を創設した当時、すなわち女性が高等教育を受けることが難しかった時代に、女性が最先端の技術と知識を携え自立して生きていくための実践的な教育を拓いたことは、非常に先駆的な側面をもっていました。一方、“男女平等”の現代において、女子大学や男女別学は時代遅れである、憲法(法律)違反ではないかという言説が聞こえてきます。しかしながら、ジェンダーギャップが埋まらない現状において、学生たちがジェンダーによる制約から解放されて、自由にのびのびと学びや活動に没頭でき、リーダーシップを発揮できる女子大学は非常に価値があると感じます。なにより、戦前、女性が高等教育機関で学問を修めることに制約を受けていたこと、この歴史的な事実を後世に伝え、女性の権利の確保や行使を保障していくためにも女子大学の存在意義は高いと考えます。ジェンダー・ダイバーシティ研究所は、和洋女子大学の創立の理念とこれまでの歩みを基軸としながら、125周年の記念事業の一つとして設立されました。女子大学の使命ともいえるジェンダー格差の解消ならびに、性や障害をはじめとして多様な背景を持つ人々が抱える困難の解消を目指し、すべての人々が安心して社会参加や生活ができる共生社会の構築に向けて、研究を行います。6ジェンダー・ダイバーシティ研究所 代表 田口 久美子ジェンダー・ダイバーシティ研究所の目的
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