ジェンダー・ダイバーシティ研究所年報_創刊号
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3ジェンダー・ダイバーシティ研究所 代表 田口 久美子 一方で、社会的・文化的に形成されたジェンダーの典型としての「女性は家庭で家事・育児をするものだ」、「男性は外で働くものだ」という男女の役割分業観が、これまで女性の働き方や社会保険・税金の在り方をはじめとする様々な社会制度に強い影響を与えてきました。いわゆる年収の壁の議論では、手取り額に注目がいきがちですが、制度の根底にあるジェンダーが、「働き控え」をはじめとして女性の働き方や生き方に制約を与えてきたことを見逃してはならないと思います。人々に社会参加の制約をもたらすのはジェンダーだけではありません。障害の有無、エスニシティ、経済状況、年齢など人々を取り巻くさまざまな要因が複雑に交差しながら、人々に社会参加の困難や生きづらさをもたらしています。たとえば日本では障害者権利条約を2014年に批准しましたが、障害のある人が、教育や就労などにおいて合理的配慮をきちんと受けられず、権利行使や自己実現が十分にできていない状況があります。和洋女子大学ジェンダー・ダイバーシティ研究所は、ジェンダー・障害をはじめとしてマイノリティによるさまざまな要因が交差する状況を多方面からとらえ、人々の人生や生活に制約をもたらす要因とその解決方法をさぐります。そして、研究成果を教育活動や社会に還元し、女子大学の存続意義を社会に問いかけ、共生社会の構築をめざして研究を重ねていきます。みなさまからのご指導・ご鞭撻を心よりお待ち申し上げます。

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