352名と、前政権の5名からさらに減少している。また、同月に実施された総選挙における女性候補者の割合は過去最高となったものの、与党自民党の女性候補者は全体の16パーセントにとどまり、第5次男女共同参画計画における候補者に占める女性の割合を2025年までに35パーセントとする目標達成には遠く及ばない。さらには男女の候補者ができるだけ均等になることを目指す「政治分野における男女共同参画推進法」が2018年に公布、施行されたが、その実効性にははなはだ疑問が残る。経済分野では、コロナ禍以降、雇用形態による収入格差が注目されるようになり、男女間の賃金格差も大きな課題となっている。特に、女性の非正規雇用の割合の高さが大きく影響しており、女性の貧困率上昇の一因となっている。総務省統計局の発表によると2024年、男性の非正規雇用は682万人、女性に関しては1,444万人で、前年度と比較した場合、男性は1万人減、女性は3万人増であった1)。中でも特に深刻なのが、非正規雇用による低収入が引き起こすシングルマザーの貧困問題であろう。ひとり親家庭で育つ子どもの学力や生活環境にも影響を及ぼし、より一層の格差を次世代へと連鎖させる要因となる可能性が否めない。さらに、管理職への昇進機会の不均衡や専門職における男女比の偏り、教育機関における女性校長の少なさなど、日本が直面しているジェンダー問題はジェンダー・ギャップ指数、「146か国中118位」と評価される現状を如実に反映している。これらの課題は、アメリカにおけるガラスの天井問題とは明らかに一線を画している。アメリカ社会では様々な人種・宗教・言語・文化・性別が混在しているにもかかわらず、人々のジェンダーに対する意識は、その多様性を反映しつつ成熟している様子が見受けられる。かたや日本の男女間の格差は依然として初歩的な段階にとどまっている。その結果、女性が平等に社会で活躍する機会が制限され性別による制約がいまだ社会全体に蔓延しているという現実に直面しているのである。その象徴的な事例が、2000年を越した頃からマスメディアに取り上げられることが徐々に増え、2024年、社会のジェンダー平等や女性の権利向上をめぐる関心の高さに比例し議論が加速した「選択的夫婦別姓」問題ではないだろうか。2025年3月8日の国際女性デーのこの日、「Be Me~私らしく」というテーマで特集を組んだ毎日新聞(朝刊)は「選択的夫婦別姓 いつ現実?」という見出しを掲げ多くのページを割いている2)。記事によると、かつては夫婦同姓しか許さなかった国もあるが、現在は調査対象95カ国中、日本を除くすべての国で夫婦別姓が可能になっているとのことである。その日本はといえば結婚したカップルの94.5パーセントが夫の姓に合わせていて、アイデンティティの喪失や名義変更などの事務負担は圧倒的に女性に偏っている。国連の女性差別撤廃委員会も2024年10月、こうした現状が「女性差別にあたる」と4度目の指摘を行った。選択的夫婦別姓の導入への反対には多様な理由が挙げられている。中でも主要な懸念材料として、夫婦および子どもが異なる姓を名乗ることによる家族の一体性・結束の希薄化、日本の伝統的家族制度の基盤をなす「同一戸籍・同一姓」の崩壊、さらには行政手続きや子どもの学校における
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