17は○○だから」という教師による働きかけが男女共学にくらべて少ないことが想定されるため、生徒は教科に関する男女の差に対する「思い込み」をあまり意識することなく、数学や理科に限らず、自分の得意な教科に思う存分集中できる可能性もある。本来、学力がありながらも、性の要因により、自分の得意な分野や本当はやりたかったことを実現できることが難しいとすれば、それは真の意味での男女平等からかけ離れていると言わざるを得ない。性による学部進学率の偏りは、個々のキャリア形成での「本当は理系に進みたかったのに」という禍根を残す可能性もあるが、問題はそれだけではない。学部における性の偏りは、さまざまな職場における従業員や管理職におけるジェンダー比率にも影響を及ぼし、市場に出回る商品の開発を筆頭に、日本の産業全体、科学技術全体に影響が及び、結果としてわたしたちの生活全体が影響を受けることは必至である。理学や工学系に女子学生がもっと増えれば、女性の活躍の場がさらに増え、仕事に多様な視点が生かされ、わたしたちの生活がより豊かなものになる可能性がある。学校教育は、性のあり様にかかわらず、子どもたちの学びの要求を引き出し、人格形成や将来のキャリア形成に向けて、自己実現を後押しする責務を担っている。文系、理系への水路分けには時間をかけ、「女子は数学や理科が苦手だから」という誤ったアンコンシャス・バイアスを払拭し、子どもたちに多様な興味・関心を触発し、新たな発見に充ちた楽しい授業を展開することが、男女平等な学校教育に近づくための大きな一歩になるのではないだろうか。令和6年版『男女共同参画白書』(内閣府男女共同参画局)p.137より引用
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