ジェンダー・ダイバーシティ研究所年報_創刊号
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※2022年度学力テストを分析した河野銀子・九州大0  教授らの研究による理科数学(%)806040女子中学3年の数学と理科の男女別正答率と意識男子女子男子好きと答えた人の割合正答率中学3年の数学と理科の男女別正答率と意識16女子は数学や理科が苦手だけど男子は得意である―こうした思い込み(いわゆるアンコンシャス・バイアス)を多くの人が持っていると考えられるのだが、2022年度の学力テストから判明したのは中学3年での数学と理科の男女の点数は同じか若干女子が上回っているけれども、女子の方が両教科への好意度をはじめとした意識が低い、ということであった。関連した研究結果は報じられてきたこともあったが、日本全体の中学3年生を対象とした結果が明らかになったことは、教育関係者を含め多くの人々に激震をもたらしたに違いない。なにしろ、一般的には「女子は数学や理科が苦手。だから大学の進学先も文系が多い」という風に受け止められてきたからだ。実際には、中学3年生では数学と理科の学力に性差はないにもかかわらず次頁に示すように、大学の進学先に明かなジェンダー差が見受けられる(令和6年版男女共同参画白書)。これに対し、河野教授は、女子の理系への進学が少ないのは学力ではなく理系の勉強への好意度など意識の影響があるとして、女子が数学や理科に関心を持てるような授業の工夫が重要としている(上記神戸新聞ウェブ記事)。「女子は数学が苦手だから、回答は男子にしてもらおう」とか、「女子は理科が苦手だから、実験は男子にしてもらおう」という声掛けは、今回の結果のいかんにかかわらずしてはならないが、これまでこうしたステレオタイプ的な対応をしていなかったかどうか、教員は自己の教育活動をふり返ることが重要である。今回の知見に関連する報告として、澤田利夫(2016)**は、高校生の「数学Ⅲ」の得点において、共学校では男子の成績が高いが、女子校と男子校では成績に差はないこと、また女子は、成績にかかわらず自信が低いことなどを示唆している。男女同じクラス編成において、基本的にはすべての子どもへの教育の平等の視座を持ちつつ、自信を持てなさそうな女子がいた場合に、教師はその不安や自信のなさを受け止め、エンカレッジするという働きかけが功を奏するかもしれない。また、女子校においては、「女子は~だから、男子2025年2月25日配信、神戸新聞NEXTより引用

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