ジェンダー・ダイバーシティ研究所年報_創刊号
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聞*のインタビューにこたえている。「誰かを助けられる人になりたくて闘っている。心の底から12文責:奈良玲子2021年8月、タリバンが再び政権を掌握すると、アフガニスタンでの女子教育は段階的に制限され、最終的に初等教育のみが認められることとなり多くの学校が閉鎖された。大学をはじめとした医療教育機関の停止はこの間、例外的に認められていたが、昨年2024年12月には全面的に閉校された。アフガニスタンに加え、イスラーム教を国教とする多くの国々では、男女隔離政策が採られており、女性患者には女性医師をあてがうことがイスラーム理念のもと推奨されている。このため医師をはじめとする女性医療従事者の養成は不可欠であり、大学などの医療教育機関の閉校が最後の最後まで引き延ばされた背景には、タリバン政権もその重要性を十分に理解していたためではないかと推測される。世界保健機関(WHO)によるとアフガニスタンは世界で最も新生児死亡率が高い国の一つで、2022年は1,000人当たり35.5人が亡くなっている(日本は0.8人)。この様な状況にもかかわらず、タリバン政権は女性が医療業界の一助となる道を遮断したのである。敬虔なイスラーム教徒である父親や夫を持つ女性の出産、或いは彼女たちが病に伏した際にはどのような対応が可能になるのだろうか。また、今後は助かるはずの命が救えなくなるケースも増えるのではないだろうか。3月8日の国際女性デーに際してアフガニスタン首都カブールの病院で女性向けの医療教育機関閉校前に既に看護師養成課程を修了して看護師の実習を受けているアフガニスタン人女性が毎日新努力すれば、報われると信じている」と。女性の教育が制限された現在、正規でないにしても、実習中の未来の看護師の不屈の精神とこれからの活躍に多くの女性たちが頼らざるを得ない状況になるのは必至である。女性教育はアフガニスタン社会の発展にとって重要な課題であり、その進展が彼女たちの社会的・経済的地位向上にも貢献するのである。しかしながら、それ以前に女性たちの命を守るための教育を早急に再開させる必要がある。3月8日の国際女性デーの今日、全ての女性が安全に生きる権利を享受できる社会を願わずにはいられない。  *毎日新聞「Be Me~私らしく 国際女性デー2025」2025年3月8日朝刊記事参照Short Article12025年国際女性デー:アフガニスタンにおける女性の教育と命

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